モバイル広告業界で仕事を初めて何よりも一番大変だったのは業界用語でした。
“SDKが不要でAPIだけで連動できるのでアプリを軽区できます。”
“AppLiftはRTB連動が可能なDSPなので、ad network、ad exchangeとも連動できてます。”
“ポストインストールイベントを通じてLTVの最適化を行い、ROIを最大化できます。”
ハァ、、、難しい業界用語があまりにも多く、それに略語は何故こんなに多いんでしょう。モバイル広告を初めて接する私にとって、このすべてが宇宙人の言葉のように聞こえました。最初は社内会議の時、内容が全く理解できなくて、心の中で叫びきれないほどでした。
AppLiftで働いていつの間にか数年が経ち、今は業界用語にもかなり専門家になってきました。
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米イーマーケター(eMarketer)によると、モバイル広告の支出が2015年、アメリカでプログラマティックディスプレイ広告の支出予算の56.2%を占めており、これは約9000億円に達する見込みだそうです。コカ・コーラアメリカマーケティング担当者であるウェンディ・クラーク氏は“あなたの計画にモバイルが含まれていないのであれば、その計画はまだ完成できてないはずだ”と、グーグルのエリック・シュミット会長は“モバイル使用はグーグルの予測よりも急激に増加いしている”と述べています。
このように“モバイル時代”はもう未来の話ではなくまさに現在です。 その分広告会社の一員としてモバイル広告について理解することが大事です。しかし’モバイルはオンラインと似ているものだろう。’と思っていたのであれば大間違いです。OSもアンドロイド、 iOSに分れており、モバイル広告が見せられる環境もアプリ内、モバイルウェブ広告と異なっており、クッキーがないためターゲットを分析する方式も異なります。
まだまだ私にも難しいモバイルアドテクですが、モバイル広告の初心者の方々に少しでも役に立てたいという気持ちで、’モバイル広告の定義’シリーズを始めたいと思います。では、まず基本用語と市場環境から攻略してみましょうか?
<目次>
1. モバイル広告市場の概要
– グローバルモバイル広告のカオスマップ
– モバイル広告市場の推移
– モバイル広告のカオスマップ簡単版
2.初期には…
– エージェンシーとは?
– アドネットワークとは?
3. アドテクの誕生!
– プログラマティックとRTB
– 広告主側(Demand Side)ソリューション: DSP, ATD
– メディア側(Supply Side)ソリューション: SSP
– アドエクスチェンジとDMP
– プログラマティックのカオスマップ簡単版
4. 分析の種類
– トラッキングSDK、アップストア分析、アプリ内分析ツール
1. モバイル広告市場の概要
グローバルモバイル広告のカオスマップ
グローバルモバイルの生態系の流れは大体この図ようになります。私もモバイルカオスマップを初めて接した時は、パニックでした。。基本編ではできる限り分かりやすくご説明致します。
モバイル広告市場は多様なサービスで様々な企業が細分化されています。なお、モバイル広告の生態系は常に変わり続けています。このような理由でマップも頻繁にアップデートされてます。モバイル広告生態系の変化を大きく下記のように整理します。
モバイル広告市場の推移
広告市場を占めている主体は広告主(Advertiser)とメディア(Publisher)があります。
- 広告主(Advertiser)は広告の費用を出資し、広告枠を要求する側、即ちDemand Side
- メディア(Publisher)は広告をユーザーに表示できるメディアで、広告枠を提供する側、即ちSupply Side
広告主は広告費用で最大の効率を得ることを、メディアは広告費用から最大の収益を得ることを目的としています。そのために、広告主と近い広告主(Demand)市場は広告主のニーズに合わせて手数料を減らし、データを組み合わせ、迅速に対応できるように、統合化されています。その反面、メディア(Supply)市場は広告枠を処理するために広告枠を販売するが、その取り引きが証券市場のような形に変わり続けており、“入札”方式を通じて広告の価格を決めるようにシステム化されています。
モバイル広告のカオスマップ簡単版
つまり簡単に整理すると、次のように図になります。
当然の話ですが、広告主(Advertiser)は自分のサービスを利用してくれるユーザーを求めます。それでこそそのユーザーから収益が発生するからです。ではモバイルアプリをサービスとして持っている広告主はどうでしょうか。ユーザーを引き入れるために多様な広告キャンペーンを実施します。(専門用語でこれをユーザー確保(以下UA、User Acquisition)と言います。)
上記の図はモバイルアプリ広告主がUAキャンペーンを実施する際、観客に到達するまでの主要プレーヤーです。基本編では上記の各主体についてご紹介致します。
2.モバイル広告時代の初期には…人間関係と協商が重要だった初期モデル
代理店とは?
- 代理店(Agency)‐様々な広告主の広告を代行する会社、代理店は広告コンテンツを制作してメディアに配信します。昔は広告主>代理店>メディアの構造で、代理店のインハウスのメディアプランナーが直接’メディアバイイング’を行いました。
しかし、広告市場の拡大につれ、広告を出したい広告主と広告枠を保有しているメディアの数は段々増えました。そこで広告主とメディアはジレンマに突き当たります。広告枠が膨大になったため、広告主は一番効率がいいメディアを一々探して広告を出すのが難しくなりました。メディアの立場では自分達の広告枠で40-60%は売り切れない問題が発生しました。
そこで登場にしたのがアドネットワークです。
アドネットワークとは?
- アドネットワーク(Ad Network)‐ 広告主とメディア(パブリッシャー)を繋ぐ事業者、多くのメディアの広告枠をまとめ、カテゴリ化して、広告主に販売します。広告主はターゲットに到達する確率が高くなり、メディアは残りの広告枠を効率よく販売できます。
最近は広告主とより良い関係を保っているアドネットワークは、DSPに発展したり広告主側に近く移動し、メディア(パブリッシャー)とより密接にしていた所はSSPになったりメディア側に近く移動する様相を呈してます。
3. アドテクの誕生!
多大な広告市場の成長によって登場したアドテクノロジー
アドネットワークの登場で、すべての問題が解決できれば理想的ですが、オンライン/モバイル広告市場が余りにも大きくなり、広告主とメディアは広告がより拡張することを求めるようになります‐(この拡張性をscalabilityと言います。)。 また広告市場の膨張により、アドネットワークを利用するにも関わらず、上記と同じような問題が発生します。広告の拡張性と効率的な広告枠の購入、残りの広告枠の処理のために“プログラマティックバイイング”と“DSP”、“ATD”、“SSP”また“アドエクスチェンジ”が登場します。
プログラマティックとRTB
- Programmatic(プログラマティックとは?)‐プログラマティックは難しく聞こえますが、人間がやることを機械が代わりにやってくれると考えれば理解しやすいと思います。広告の取り引き、広告枠の最適化がシステムあるいはプログラムによって自動化されることを意味します。
- RTB (Real-Time Bidding, リアルタイム入札)‐言葉どおりリアルタイム入札を通じて広告の取り引きが行われます。広告枠に入札希望者の中で、最も高く入札した広告主の広告が配信されます。この一連の過程はミリ秒単位でリアルタイムに行われます。
ここで一服!プログラマティック広告とRTBの違いは何でしょうか。
すべてのRTBは自動化された方式なので’プログラマティック‘ですが、逆にすべてのプログラマティック広告がRTBではありません。RTBはプログラマティックの一種であり、リアルタイムではないプログラマティック技術も含まれます。プログラマティックがより大きいカテゴリでRTBを含んでいると考えれば理解しやすいと思います。
広告主側(Demand Side)ソリューション: DSP, ATD
上記で説明したように、広告主は広告費用で最大の効率を求めます。広告を見て広告主のサービスを購入するターゲットが大勢集まっているメディアに広告するのが効率的でしょう。モバイルに分れている数多くの広告枠を、地域、年齢等の特徴で区分している’ターゲット情報’として一斉に購入できたらどうでしょう。このような広告主のニーズに合わせるためにDSPとATDが誕生します。
- DSP(Demand Side Platform)‐広告主と代理店が1つのプラットフォームから複数のアドネットワークが保有している広告枠を管理し、購入できるプラットフォーム、DSPを通じて広告主と代理店はメディアを一々選ぶのではなく、地域、行動等広告主が求めるターゲット情報によって多様な広告枠を効率的に購入できます。
- ATD(Agency Trading Desk)‐ATDは主に代理店の特別ユニットとして、DSPあるいは他の技術を活用して’プログラマティック’や入札の形でメディアを購入し、最適化作業を行います。例えば、WPPグループのXaxisとOmnicomのAccuen等があります。
メディア側(Supply Side)ソリューション: SSP
メディアは広告費用から最大の収益を求めます。メディアのニーズに合わせて誕生した技術がSSPです。SSP(Supply Side Platform)‐メディア(パブリッシャー)が広告枠を自動的に管理、販売、最適化できるようにサポートするシステム、SSPは多様なアドネットワーク、DSPと連携されており、より多くの購入者に到達可能で、購入者からRTB(リアルタイム入札方式)で広告枠を販売してメディア社の収益が最大化できるようにサポートするプラットフォームです。
アドエクスチェンジとDMP
- Ad Exchange‐アドエクスチェンジは、アドネットワークが一段階進んだ形態で、複数のアドネットワークに同時につながっており、広告枠の購入と販売を促進させます。DSPとSSPの間で取り引きの仲介を行う役割をしていると考えれば理解しやすいと思います。上記で説明したRTB取り引きがアドエクスチェンジの中で行われます。
アドテクのメインプレーヤーを説明したついでにDMPについても説明してみましょうか?
- DMP(Data Management Platform)‐広告枠購入に必要なデータをまとめて統合分析、提供するプラットフォーム
今はビッグデータ時代です。つまり溢れるデータが問題です。このデータを分析する前まではただの数字に過ぎません。DMPはこれらのデータを採取、分析して広告業界、パブリッシャー、他の事業者に有用な結果物として提供する技術です。DMPは広告主、代理店、メディアすべてで利用しており、DSP、SSPと連携して購入決定をサポートします。
プログラマティックのカオスマップ簡単版
今まで説明した広告技術は我々は通常アドテクと言います。上記のモバイル広告マップの簡単版から ‘プログラマテォック’ 生態系(またはアドテク)のみ表現すると次のような図になります。
4. 分析の種類
広告主とメディアをつなぐプレーヤーについて1つずつ調べてみました。ここまでで、少し理解できたのでしょうか。
最後にモバイル広告市場で欠かせない分析市場について調べてみましょう。
トラッキングSDK、アップストア分析、アプリ内分析ツール
- トラッキング(Tracking)‐トラッキングSDKは広告の進行状況を記録し、集計するツールです。トラッキングツールから得た分析結果を通じて、どのメディアが効率が良いのかが把握可能で、これを通じて広告主は広告キャンペーンのROI(投資利益率)が最大化できます。ウェブではよく知られているGoogle Analyticsがあります。モバイルトラッキングSDKとしては、AppsFlyer, adjust, TUNE, Kochava等があります。
- アップストア分析(App Store Analytics)‐アップストアの分析を提供します。アプリのインストール数等基本的なデータを提供するアップストアとアップストアに関するより多くのデータを提供するApp Annieのような事業者があります。
- アプリ内分析ツール(In-app Analytics)‐アプリ内で起こるユーザーの使用パターンを専門的に分析する事業者、アプリ内分析を通じてユーザーエクスペリエンスを向上させ、最終的にはユーザー離脱率を減らせます。
ここまでがモバイル広告の定義第1章、’モバイル広告市場とプログラマティック広告の理解’でした。
できるだけわかりやすく説明しようと頑張りましたが、いかがでしょうか。少しでも役に立てれば幸いです!では次回第2章では様々なモバイル広告の単価と種類についてご紹介致します。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます:) 第2章も期待してください。