ここ数年、特にアドテク業界では機械学習はまさに「フォース・マジュール」、抗えない流れになっています。例えばモバイル広告主にとって、機械学習はこれまでのアドテクの手法を変えつつあります。RTB(リアルタイム入札)やlookalikeターゲティング、ユーザーデータの拡張は、より効果的に費用を抑えたキャンペーン配信を可能にしています。
次はどのようなトレンドがやってくるのでしょうか?モバイル広告における機械学習活用の行方を左右する、2018年の5つのトレンドを見ていくことにしましょう。
サービスとしての機械学習
IBMやGoogle、Amazon、Microsoftのようなテクノロジーの巨人たちは、機械学習を前面に押し出したイノベーションにますます注力しています。こうした大企業ではすでに、マーケターにとって時間の節約になるソリューションを備えた機械学習モデルをサービスとして提供しています。クラウド型MLaaS(Machine Learning As a Service、サービスとしての機械学習)モデルの主なものにはCloud Vision APIやCloud Natural Language、Azure Machine Learning Studioなどがありますが、こうしたモデルによって広告主は、より効率的に顧客にリーチするために各社のサービスをカスタマイズできます。その他の応用領域としては考えられるのは、CPAやFraud防止アルゴリズムにおけるディープラーニング利用の促進でしょう。この領域では、TensorFlowやApache MXNet、Microsoft Cognitive Toolkitといったディープラーニングのプラットフォームが提供されています。機械学習の分野が勢いを増すにつれ、業界に競争が生まれ、ひいてはマーケターもその恩恵を受けられるようになるでしょう。
チャットボットと会話型コマース
機械学習分野における進歩はチャットボットのインターフェースをより自然で使いやすいものにしてきました。アプリをタップしていたのは過去の話となり、チャットによるインターフェースがますます身近になっています。アプリのユーザーは今や、チャットボットを使ってタクシーをつかまえたり、ホテルの予約や支払いをしたりできるのです。こうした情報端末は、自然な会話形式の言語でのコマンドを理解するだけでなく、私たちにとって賢明な選択をし、こちらのオーダーを完了してくれます。この会話型コマースの分野には潜在的なmCommerceのプレーヤーが多く存在します。会話型マーケティングは音声コマンドのことだけではありません。人や機械が視覚や音、センサーなど複数の方法を使えるようにし、包括的な会話型エクスペリエンスを創出するようになるだろうという研究もあります。
ブロックチェーンと透明性の確保
これまで金融業界の申し子だったブロックチェーンが、なんとアドテク業界にもやってきました!この、すでに実績がありながらも最新のバズワードであるブロックチェーンは、Fraudと不透明性という広告の二大問題を解決する救世主として歓迎されています。ブロックチェーンという取引に関するセキュアなデジタル台帳を採用することで、アドテク業界のエコシステム内のステークホルダーたちはついに広告のバイイングと配信プロセスの透明性を確保しなければならなくなり、低コストの実現、そして最終的には消費者の広告体験の改善をもたらすかもしれません。
強化学習の拡がり
強化学習とは、特定のコンテクストにおいて機械が自動的に理想的なふるまいを決定できるようにし、最終目標やパフォーマンスを最大限高めようという、機械学習の分野のひとつです。分野としてはもう何年も前からあるものですが、最近のディープラーニングの進歩のおかげでこちらも大きく進展しています。広告主はすでに、クリエイティブ最適化のための多腕バンディットアプローチを用いた強化学習の多種多様なメリットを理解し始めています。どのようなキャンペーンを行なうにしても、広告主にとって大切なのは、どのクリエイティブの組み合わせが他より優れているかを早期に判断し、組み合わせを最適化し予算をそこに振り分け、結果的にROIを向上させることです。従って、より効率的なA/Bテストのプロセスが広告主のパフォーマンスを最大化するよう導くことができます。
人間のふるまいを模倣するロボット
コンピューターの画像認識やディープラーニングの最近の進歩により、それまで人間が関わらなければ不可能と思われてきたタスクも、訓練によって機械に解決させることが経済的に可能になっています。例えば、道路標識や画像の中の手書きの数字といった目標物を理解する、などです。こうしたタスクをユーザーに課すことは、ディベロッパーが機械と人間のウェブサイトのコンテンツへの対応を区別するために重要な方法です。この問題はオンライン広告にもよく当てはまり、ノンヒューマントラフィック(人間以外によって生成されるトラフィック)という言葉も生まれています。広告主はこのノンヒューマントラフィックに多額のお金を払っており、それゆえ人間の「ビューアビリティ」の確保は彼らの重要な関心事のひとつです。こうしたロボットの障壁を緩和するため、広告関連企業やMOATアナリティクスのようなサービスプロバイダーが、マウスの動きを追跡するなど本当に人間のふるまいであることを証明する新たな方法を編み出そうと激しい競争を繰り広げています。しかしながら、その手の人間のふるまいを模倣するよう機械を訓練できるのも明らかです。そこで、「Playable」のような新たな広告フォーマットがこの問題に対するひとつの解決策になるかもしれません。機械学習を取り巻くコミュニティは、機械が訓練され、そうしたゲームのやり方を学習できることを証明してきました。しかし、バナーのようなその他のクリエイティブフォーマットに比べ、経済的な視点からその実現可能性はまだ低く、ゲーム中の異常パターンを検出する方が簡単でしょう。